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第33回はり師きゅう師国家試験
総合問題(基礎) 解答&解説

問題 83
診断に有用性が最も低いのはどれか。
1. CT 検査
2. MRI 検査
3. 筋電図検査
4. 超音波検査

解説
CT検査:骨や出血の描出に優れる。
MRI検査:脳・脊髄・軟部組織の詳細評価に優れる。
筋電図検査:末梢神経や筋疾患の診断に必須。
超音波検査:腹部や心臓、血管などには有用だが、頭蓋内や脊椎内部の評価には適さない。

したがって、神経疾患などの診断においては 超音波検査の有用性が最も低い

解答:4

「17 歳の男子。バイク走行中に転倒し救急搬送。ヘルメットの右外側に傷があり、 右肩に外傷がある。右上肢は自動運動不能で知覚異常を認めた。意識は清明、独歩可 能、脳神経に異常はない。」

問題 84
・身体所見では肘の屈曲・手関節の背屈が不能で、手指の屈曲もできない。 上肢の骨折や関節の脱臼はない。損傷部位はどれか。
1. 側頸部
2.腋窩部
3.上腕部
4. 肘 部

解説

 

17歳男性、バイク事故 → 右肩外傷あり
右上肢:自動運動不能 + 知覚異常
肘の屈曲不能(上腕二頭筋・腕筋 = 筋皮神経支配)
手関節背屈不能(橈骨神経支配)
手指の屈曲不能(正中神経・尺骨神経支配)
上肢全体に広範な運動麻痺 → ほぼ全ての末梢神経に及ぶ
骨折・脱臼はなし → 末梢の局所神経損傷ではない

 

1.正解
腕神経叢(C5–T1)が鎖骨上窩から出る部位。

この部位で損傷すると、上肢全体の運動・感覚障害が出現。
本症例の「肘屈曲〜手指屈曲まで全部ダメ」に合致。

 2.誤り。

腋窩神経や橈骨神経などが通過。もしここで損傷しても、全ての神経は障害されにくい。
局所的麻痺(例:腋窩神経麻痺 → 三角筋麻痺)にとどまる。
➡ 本症例ほど広範な麻痺は起こらない。
 

3.誤り。
橈骨神経や筋皮神経などは個別に走行。

骨折や圧迫で局所神経麻痺はあり得るが、手指屈曲まで障害されるほど広範ではない。
➡ 不適。

4.誤り。
正中神経や尺骨神経などはここを通る。
肘部で損傷しても、肘屈曲(筋皮神経)や手関節背屈(橈骨神経)は保たれる。
➡ 不適。

ポイント
肘屈曲〜手指屈曲まで全部不能 → 腕神経叢損傷を疑う

局所麻痺か広範麻痺かで、障害部位を推定する。

解答:1

「30 歳の男性。右手小指のしびれを主訴に受診。手関節の可動域制限はないが、右 肘関節の屈曲可動域は 120 度であった。幼少期に右肘関節骨折の治療歴がある。」

問題 85
・身体所見上認められるのはどれか。
1. 肘関節屈筋力低下
2. 外反肘
3. 下垂手
4. 猿 手

解説

30歳男性
主訴:右手小指のしびれ → 尺骨神経領域の感覚障害
肘関節屈曲可動域が 120°(制限あり)
幼少期の肘関節骨折の既往あり → 後遺症の可能性
手関節は正常(→橈骨神経障害による下垂手ではない)

 

1.誤り。
主に筋皮神経(C5〜C6)支配の上腕二頭筋・腕筋。
本例は尺骨神経障害が主体であり、肘屈曲は保持される。よって不適。

2.正解
小児期の肘関節骨折(特に上腕骨顆上骨折)の後遺症で生じやすい。
外反肘によって尺骨神経が牽引され、尺骨神経麻痺を発症。よって正解。
 

3.誤り
橈骨神経麻痺でみられる(手関節背屈不能)。
本例は小指のしびれ=尺骨神経障害であり一致しない。よって不適。
 

 4.誤り。
正中神経麻痺で母指対立障害。

小指のしびれとは無関係。よって不適。

ポイント
小児期の肘関節骨折 → 外反肘変形の後遺症
​外反肘 → 尺骨神経が牽引され 小指〜環指のしびれ(尺骨神経障害)

解答:2

「30 歳の男性。右手小指のしびれを主訴に受診。手関節の可動域制限はないが、右 肘関節の屈曲可動域は 120 度であった。幼少期に右肘関節骨折の治療歴がある。」

問題 86
・障害神経はどれか。
1.  筋皮神経
2. 橈骨神経
3. 正中神経
4. 尺骨神経


解説
1.誤り。

支配:上腕二頭筋・上腕筋(肘関節屈曲)、前腕外側皮神経。
障害時:肘関節の屈曲力低下、前腕外側の感覚障害。
小指のしびれとは一致しない。よって不適。
 

2.誤り。

支配:上腕三頭筋、前腕伸筋群(手関節・手指伸展)、手背橈側の感覚。
障害時:下垂手(手関節背屈不能)、手背橈側の感覚障害。
本例は手関節可動域は正常であり、手背橈側ではなく小指がしびれている。よって不適。

3.誤り。
支配:前腕屈筋群の大部分、母指対立筋など。感覚は母指〜環指橈側。

障害時:猿手(母指対立不能)、手掌橈側の感覚障害。
本例の症状(小指のしびれ)は一致しない。よって不適。
 

4.正解。
支配:手内在筋(骨間筋・小指球筋など)、一部の前腕屈筋。感覚は小指と環指尺側。障害時:小指〜環指尺側の感覚障害、指の外転・内転障害、進行すると鷲手。
​小児期の肘骨折後遺症(外反肘)で尺骨神経が慢性的に牽引されやすい。よって正解

根拠(要点)

主訴が 右手小指のしびれ → 感覚領域は 尺骨神経(小指・環指内側) が典型的。
肘関節屈曲可動域が120°(通常の屈曲150°前後に対して制限あり)と 幼少期の肘骨折既往 → 上腕骨顆上骨折後に生じる外反肘(cubitus valgus) の後遺症が疑われ、これにより尺骨神経が牽引・慢性障害されやすい。
手関節可動域は保たれている → 橈骨神経障害(下垂手)や正中神経障害(母指対立障害=猿手)とは不一致。
​筋皮神経障害なら上腕屈曲(上腕二頭筋など)障害や前腕外側の感覚障害が出やすいが、本例は小指領域の症状が主体。


臨床で想定される所見(尺骨神経障害)

小指・環指内側の知覚鈍麻またはしびれ
手内在筋(骨間筋・虫様筋)の筋力低下 → 指の外転・内転低下、握力低下長期では手内在筋萎縮(鷲手変形)や Froment徴候 など

短くまとめると、症状の分布(小指のしびれ)+小児期肘骨折の既往と肘可動域制限から尺骨神経障害が最も妥当です。

ポイントまとめ(試験対策)

筋皮神経 → 肘屈曲障害
橈骨神経 → 下垂手
正中神経 → 猿手
尺骨神経 → 小指のしびれ、鷲手、外反肘がリスク要因

解答:4

次の症例について、問題87・88の問いに答えよ
「78歳の肥満女性。以前から腰痛があった。3日前から左膝内側の痛みが出現。
市販の外用薬を使用して様子をみていたが、歩行時痛が増強してきたため来院した。」

問題 87
・診断に有用性が最も低いのはどれか
1. 間欠跛行の聴取
2.膝蓋跳動
3. スパーリングテスト
4. 下肢伸展挙上テスト


解説

1.正しい。

間欠跛行は 腰部脊柱管狭窄症の診断に有用
症状の特徴を確認することで診断補助になる。よって有用。

2. 正しい。

膝関節内の 関節水腫や炎症の評価
 に有用特に高齢者の膝痛評価に役立つ。よって有用。

3. 誤り。

頚椎疾患(頚椎神経根圧迫)の評価に用いられる
下肢や膝痛の原因診断には ほとんど有用性なし。よって正解(有用性最も低い)

4. 正しい
坐骨神経痛や腰椎椎間板ヘルニアのスクリーニングに有用

下肢痛評価では必須の診断補助。よって有用。

症例の要点
78歳女性、肥満、慢性腰痛

左膝内側の痛み(3日前から)
歩行時痛が増強
市販外用薬で改善なし

→ 高齢者の膝痛+歩行時痛、慢性腰痛あり → 膝関節疾患や腰椎由来の坐骨神経症を考慮。

解答:3

「78歳の肥満女性。以前から腰痛があった。3日前から左膝内側の痛みが出現。
市販の外用薬を使用して様子をみていたが、歩行時痛が増強してきたため来院した。」

問題 88
・運動療法で適切でないのはどれか
1. 水中ウォーキング
2. 体幹筋訓練
3. 大腿四頭筋訓練
4. 長距離歩行

解説

 1.誤り。

水の浮力で体重負荷が軽減される
膝や腰への負担が少なく安全。よって適切

2. 誤り。

水の浮力で体重負荷が軽減される
膝や腰への負担が少なく安全。よって適切

3. 誤り。

膝関節を支える筋力強化に有効
膝関節症の基本的な運動療法。よって適切

4. 正解
膝関節内側痛がある場合、膝への負荷が大きく悪化の恐れあり

高齢者の急性膝痛時には 不適切。よって正解(適切でない)
 

症例の要点
78歳女性、肥満

慢性腰痛あり
左膝内側痛が急に出現
歩行時痛増強

 

→ 高齢者の 膝関節症や変形性膝関節症(内側) が疑われる
→ 運動療法で 膝や腰への負荷が少ない方法を選ぶことが重要

ポイント(国家試験対策)

高齢者・膝関節症・腰痛がある場合の運動療法は 低負荷・関節保護型 が基本
水中運動や筋力強化訓練は推奨
​長距離歩行やジョギングは急性症状時には禁忌

解答:4

次の症例について、問題89・90の問いに答えよ。
「55歳の男性。夕食にしめさばを食べ就寝したところ1時間半後に強い心窩部痛で覚醒、救急搬送された。下痢は認められなかった。」

問題 89
・本症例の発症について正しいのはどれか。
1. イカの生食では発症しない。
2. 一度発症したら二度と罹患しない。
3. 食材の-20℃、48時間冷凍で予防できる。
4. 細菌感染症である。

解説
1.誤り。
アニサキスは イカ、サバ、サケ、イワシなど多くの魚介類に寄生する。

2. 誤り。
免疫はできず、同じ食材を食べれば再度発症することがある。

3. 正解。
アニサキスは冷凍・加熱で死滅するため、食品衛生上の予防策として有効。

4. 誤り。
アニサキスは 線虫(寄生虫)による感染症で、細菌性ではない。
 

症例の要点
55歳男性

夕食に しめさば を摂取後 1時間半で 心窩部痛で発症
下痢なし

 

→ 急性発症、神経性の症状、典型的な アニサキス症 の可能性が高い
(アニサキスは生魚に寄生する線虫で、加熱・冷凍で予防可能)

 

解答:3

「55歳の男性。夕食にしめさばを食べ就寝したところ1時間半後に強い心窩部痛で覚醒、救急搬送された。下痢は認められなかった。」

問題 90
・本疾患について正しいのはどれか。
1. 胃内視鏡治療を行う
2. アナフィラキシーは発症しない。
3. 胃潰瘍を認める。
4.抗菌薬投与が有効である。

解説

1.正しい。
胃アニサキス症では、寄生虫を 内視鏡で摘出することが治療の第一選択​
症状の改善も迅速

2. 誤り。
アニサキスによるアレルギー反応で アナフィラキシーを起こすことがある

3. 誤り。
急性アニサキス症では 粘膜浮腫や軽度の発赤はあるが潰瘍は基本的にない

4. 誤り。
原因は線虫(寄生虫)であるため 抗菌薬は無効
 

症例の要点
55歳男性

夕食にしめさばを摂取後 1時間半で心窩部痛
下痢なし
​急性発症 → アニサキス症 が典型

ポイント(国家試験対策)

急性発症の心窩部痛+魚介類生食 → 胃アニサキス症を疑う
治療は 内視鏡摘出
抗菌薬や潰瘍治療は不要
​アナフィラキシーのリスクもあるため注意

 

解答:1

【監修者】 鍼灸学博士 納部瑠夏

鍼灸系の大学院を修了し、鍼灸治療の専門家の証である「鍼灸学博士」を保持。

reCare道玄坂鍼灸院の院長として臨床を行う傍ら、福岡リゾート&スポーツ専門学校で非常勤講師として教鞭を行っている。

一般社団法人日本体力医学会公益財団法人全日本鍼灸学会所属

保有資格

鍼灸学博士、はり師・きゅう師、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー、健康運動実践指導者

主な研究業績

【共同執筆者】

今西 好海

  保有資格 鍼灸学修士、はり師・きゅう師、健康運動実践指導者

奈須 守洋

  保有資格 鍼灸学修士、はり師・きゅう師