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第32回はり師きゅう師国家試験
はり理論 解答&解説

問題 161
滅菌済単回使用毫鍼の医療機器クラス分類はどれか。
1. クラスⅠ(一般医療機器)
2. クラスⅡ(管理医療機器)
3. クラスⅢ(高度管理医療機器)
4. クラスⅣ(高度管理医療機器)

医療機器は、医療機器規制国際整合化会議(GHTF74)により、リスクに応じて4つのクラスに分類されています。このうち、クラスⅢおよびクラスⅣに該当する医療機器を高度管理医療機器と分類して、医薬品医療機器総合機構(PMDA)での審査や厚生労働大臣の承認が必要とされています。

鍼灸師が使用する鍼は、体内へ挿入しますが、挿入されているのが一時的であるため、不具合が生じた場合に人体へのリスクが比較的低いと考えられる「クラスⅡ」に分類されており、選択肢2が正解の選択肢になります。

解答:2

問題 162
押手について最も適切なのはどれか。
1.  刺鍼部位の皮膚や筋肉を和らげる。
2. 左右圧に相当するのは固定圧である。
3. 患者の急な体動を察知し、動揺を防ぐ。
4. 刺鍼抵抗を察知する。

押手には3つの圧があり、それぞれには鍼を適切に刺すために役割があります。そのうち、「周囲圧」は鍼で刺激を行う部位を固定して、体動などを防ぐ役割があります。

そのため、押手の役割を問われているこの設問の正解の選択肢として、選択肢3の「患者の急激な体動を察知し、動揺を防ぐ」が適切になります。

解答:3

問題 163
小児鍼で、接触鍼と摩擦鍼の両方の特徴をもつのはどれか。
1. 集毛鍼
2. 振子鍼
3. いちょう鍼
4. ローラー鍼

 

小児鍼は普段良く使用する毫鍼とは異なり、体内へは刺入しません。そのため、体表から刺激を行い、その刺激の方法により「接触鍼」と「摩擦鍼」に大別することができます。そのうち、両方の特徴をもつ小児鍼は「いちょう鍼」になります。

解答:3

問題 164
鍼療法の禁忌はどれか。
1. 化学療法に伴う吐き気
2. 悪性腫瘍に伴う痛み
3. つわり
4. クスマウル呼吸を伴う意識障害

 

WHOは、1999年にガイドライン内で鍼灸を行ってはいけない状態や状況、つまり、「禁忌」を発表しています。そこには、「妊娠」や「易感染性患者」などが含まれています。

この問題の選択肢のうち、「クスマウル呼吸を伴う意識障害」は鍼灸治療の禁忌の「緊急事態や手術を必要とする場合」に該当しますので、選択肢4の「クスマウル呼吸を伴う意識障害」が正解の選択肢になります。

 

鍼灸治療の禁忌のひとつに「悪性腫瘍」があるため、選択肢2の「悪性腫瘍に伴う痛み」が正解だと思ってしまいますが、「悪性腫瘍」に対して直接、鍼を刺すことが禁忌であり、悪性腫瘍に伴う痛みに対して鍼灸施術を実施することは問題ありませんので、この選択肢は不正解となります。

解答:4

問題 165
深刺により椎骨動脈を損傷するリスクが最も高い経穴はどれか。
1.  瘂門
2. 風池
3. 完骨
4. 翳風

4つの選択肢の経穴はそれぞれ頭頸部に位置していますが、このうち風池は「乳様突起下端と瘂門穴との中間で、後髪際陥凹部」にある経穴であり、この深部には椎骨動脈が走行しています。

そのため、椎骨動脈損傷のリスクが最も高い経穴は選択肢2の「風池」になります。

解答:2

問題 166
鍼施術を行う場合、感染症対策として適切でないのはどれか。
1. 手洗い後の手指の乾燥にはペーパータオルを使用する。
2. 鍼皿は滅菌済みディスポーザブルのものを使用する。
3. 施術野の消毒には 70 %イソプロピルアルコールを使用する。
4. 抜鍼時に使用した消毒綿花は一般廃棄物として処理する。

患者の体液が付着している可能性のある物は「感染性廃棄物」として処理する必要があります。

体内へ刺入した鍼には体液が付着しており、その鍼を抜鍼した際に消毒用綿花にもその体液が付着している可能性があります。そのため、抜鍼時に使用した消毒綿花は「感染性廃棄物」として処理する必要があるため、選択肢4の「抜鍼時に使用した消毒綿花は一般は器物として処理する」という選択肢は感染症対策として適切ではないため、この選択肢が正解となります。

解答:4

問題 167
切皮時に一次痛が生じた。関与する侵害受容器はどれか。
1. 高閾値機械受容器
2. ポリモーダル受容器
3. メルケル盤
4. 毛包受容器

 

鍼を刺した際に発生する痛みに関しては、切皮痛と深部痛に分けることができます。このうち、今回の設問の「切皮痛」は一次痛とよばれ、「高閾値機械受容器」が感受します。そのため、選択肢1の「高閾値機械受容器」が正解の選択肢になります。

解答:1

問題 168
痛覚の伝導に関与するのはどれか。
1.  脊髄灰白質中間質
2. 脊髄前側索
3. 脊髄後側索
4. 脊髄後索

 

痛みを伝導する伝導路に「脊髄視床路」があります。

この伝導路の二次ニューロンは脊髄の側索のうち「前側索」を上行しています。

そのため、痛覚の伝導に関与するという設問に対して、選択肢2の「脊髄前側索」が正解になります。

解答:2

問題 169
鍼刺激による発汗に関与し、エクリン腺に分布する受容体で最も適切なのはどれか。
1. α受容体
2. β受容体
3. ニコチン受容体
4. ムスカリン受容体

汗腺にはこの設問で問われている「エクリン腺」と「アポクリン腺」の2種類があります。

このうち、エクリン腺は「交感神経」に支配されています。交感神経の節後線維の末端から放出される神経伝達物質は身体の大部分では「ノルアドレナリン」であり、その受容体は「α受容体」もしくは「β受容体」です。

しかし、身体の一部分では例外があり、汗腺も例外の一つです。

エクリン腺を支配している交感神経の末端からはアセチルコリンが放出され、その受容体は「ムスカリン受容体」です。

そのため、鍼刺激により交感神経が興奮し、発汗に関与する受容体は「ムスカリン受容体」であるため、選択肢4が正解の選択肢になります。

 

なお、ムスカリン受容体にはサブタイプが3つあり、エクリン腺に分布している受容体は、ムスカリン受容体サブタイプ3(M3)になります。あいうえおかきくけこさしすせそたちつてとなにぬねのはひふへほまみむめもやゃゆゅよらりるれろわ・を・んアイウエオカキクケコサシスセソタチツテトナニヌネノハヒフヘホマミムメモヤャユュヨララリルレロワ・ヲ・ン

解答:4

問題 170
鍼刺激による皮膚の血流増加に関係するのはどれか。
1.  NO
2. セロトニン
3. アンジオテンシン
4. ノルアドレナリン

「鍼を刺すと血流が良くなる」ということは良く知られており、様々なメカニズムが関与していることが明らかになっています。そうしたメカニズムの一つに、鍼を刺すことで図で示した様々な「血管拡張物質」が放出される、ということがあります。

「血管拡張物質」は色々とありますが、その一つに「NO」がありますので、選択肢1の「NO」が正解の選択肢になります。

解答:1

【監修者】 鍼灸学博士 納部瑠夏

鍼灸系の大学院を修了し、鍼灸治療の専門家の証である「鍼灸学博士」を保持。

reCare道玄坂鍼灸院の院長として臨床を行う傍ら、福岡リゾート&スポーツ専門学校で非常勤講師として教鞭を行っている。

一般社団法人日本体力医学会公益財団法人全日本鍼灸学会所属

保有資格

鍼灸学博士、はり師・きゅう師、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー、健康運動実践指導者

主な研究業績

【共同執筆者】

今西 好海

  保有資格 鍼灸学修士、はり師・きゅう師、健康運動実践指導者

奈須 守洋

  保有資格 鍼灸学修士、はり師・きゅう師