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第32回はり師きゅう師国家試験
きゅう理論 解答&解説

問題 171
透熱灸に用いる艾の品質で最も適切なのはどれか。
1. 湿気を帯びている。
2. 夾雑物が多い。
3. 淡黄白色である。
4. 灰分が多い。

透熱灸には精製度の高い良質艾を使用します。

そのため、この設問は良質艾の特徴を問うています。

図で示したように、良質艾は色合いが「短黄白色」であるため、選択肢3の「短黄白色である」が正解の選択肢になります。

解答:3

問題 172
焦灼灸について正しいのはどれか。
1.  一局所に多壮施灸する。
2. 患者が気持ち良いところで消火する。
3. 免疫機能低下者に適した灸法である。
4. 輻射熱による温熱刺激を与えることを目的とする。

灸の種類は大きく分けると火傷の痕を残す「有痕灸」と火傷の痕を残さない「無痕灸」に大別させることができます。このうち、本問題で問われている「焦灼灸」は有痕灸であり、施灸した部位に火傷の痕が残ります。

そのため、4つの選択肢のうち1つが火傷の痕を残すような「有痕灸」に関しての文章、残りの3つは火傷の痕を残さない「無痕灸」に関しての文章になります。

そうした観点で各選択肢を見てみると、

選択肢1の「一局所に多壯施灸する」は、1壯だけでなく多壯の刺激を同一部位に行うので、その部位に火傷の痕が残ります。

一方で、選択肢2~4は刺激量が比較的少なく火傷の痕が残らない灸法になります。

そのため、火傷の痕が残る「焦灼灸」に関しての文章は選択肢1となります。

解答:1

問題 173
輻射熱を用いるのはどれか。
1. 押灸
2. 箱灸
3. 塩灸
4. 紅灸

灸は温熱刺激を生体に与える治療方法ですが、熱の伝え方よって「伝導熱」と「輻射熱」の二つに掛けることができます。このうち、「伝導熱」は生体に熱源を直接接触させることで熱を伝える方法で、「輻射熱」は熱源と生体の間に空気を温めることで熱を伝える方法です。

輻射熱により熱を伝える灸法には棒灸や箱灸、温筒灸や台座灸があります。そのため、輻射熱を用いる灸法として選択肢2の「箱灸」が正解の選択肢になります。

解答:2

問題174 小児に対して最も適した灸法はどれか。
 1.透熱灸
2.焦灼灸
  3.打膿灸
4.艾条灸

小児は成人と比較して刺激量を低くする必要があります。そのため、小児に対して灸施術を実施する際には有痕灸ではなく、無痕灸を実施する必要があります。

選択肢の1~3の灸法は有痕灸ですので、小児に対して実施する灸としては不適切です。そのため、選択肢4「艾条灸」が正解の選択肢になります。

解答:4

問題175  温熱刺激情報を二次ニューロンへ伝達するのはどれか。
1.  グルタミン酸
2. ノルアドレナリン
3. アセチルコリン
4. ドパミン

灸などの温熱刺激情報を伝達する「脊髄視床路」は1次ニューロンから2次ニューロンへシナプスするのは脊髄後角で行われます。そのシナプスに使用される神経伝達物質は図の赤枠で示されているように「サブスタンスP」と「グルタミン酸」です。

そのため、温熱刺激情報を二次ニューロンへ伝達する神経伝達物質は選択肢1の「グルタミン酸」になります。

解答:1

問題 176
透熱灸刺激の伝導に関係するのはどれか。
1. 脊髄前角
2. 薄束
3. 脳幹網様体
4. 内側毛帯

透熱灸刺激つまり、温熱刺激を伝導するのは「脊髄視床路」です。この伝導路は脳幹網様体を通過しますので、選択肢3の「脳幹網様体」が正解の選択肢になります。

解答:3

問題 177
施灸による交感神経活動の亢進反応はどれか。
1. 血圧上昇
2. 皮膚血管拡張
3. 瞳孔括約筋収縮
4. 気管支平滑筋収縮

本問題は施灸することにより交感神経活動が亢進した結果、生体に生じる反応を回答するものです。

交感神経の活動が亢進するときにはいわゆる「闘争」状態です。つまり、「戦える」状態になりますので「血圧上昇」が正解の選択肢になります。

解答:1

問題 178
施灸により胃運動亢進をきたす反射の遠心路を構成するのはどれか。
1.  Aα線維と Aγ線維
2. Aβ線維とB線維
3. Aδ線維とC線維
4. B線維とC線維

胃を支配する自律神経は胸髄からの交感神経と延髄からの副交感神経の二重支配です。

自律神経の遠心路は交感・副交感神経ともに節前線維と節後線維から構成されており、交感神経の節前線維はB線維、節後繊維はC線維、副交感神経の節前線維と節後線維はともにC線維です。

胃運動を亢進させる反射の遠心路は胃を支配している自律神経ですので、交感神経の節前線維と節後線維の「B線維とC線維」が正解の選択肢になります。

解答:4

問題 179
透熱灸による急性炎症反応で最も遅く出現するのはどれか。
1.  ブラジキニンの放出
2. セロトニンの放出
3. 補体の滲出
4. 膠原線維の産生

透熱灸などを施灸した部位には炎症が生じます。その結果、ヒスタミンなどの炎症性物質により血管拡張や毛細血管の透過性が亢進します。

血管透過性が亢進により、まずはヒスタミンやセロトニンが放出(炎症後1~5分程度がピーク)され、これらに少し遅れてプロスタグランジンやブラジキニンが放出されます。また、補体も滲出します。

これらが終わった後、膠原繊維が産生させることで線維化します。

そのため、選択肢の中で最も遅く出現する急性炎症反応は選択肢4の「膠原繊維の産生」となります。

解答:4

問題 180
温熱ストレスにより抗炎症性に働くのはどれか。
1.  コルチゾール
2. プロスタグランジン
3. インターロイキン6(IL-6)
4. ヒスタミン

抗炎症とは、その文字の通り「炎症を抗う」ということで、炎症を鎮めようとすることを意味しています。

様々な炎症を鎮める作用である抗炎症作用がある物質として副腎皮質で生成されるステロイドホルモンの一種である「コルチゾール」が有名です。

コルチゾールがステロイドホルモンであることから、抗炎症の薬物を使用している患者さんなどは「コルチゾール」の薬を使用していると言わずに、「ステロイド」の薬を使用しているなどを言われることが多いですので、併せて覚えておきましょう。

そのため、温熱ストレスに対して抗炎症性に働くのは選択肢1の「コルチゾール」が正解の選択肢になります。

解答:1

【監修者】 鍼灸学博士 納部瑠夏

鍼灸系の大学院を修了し、鍼灸治療の専門家の証である「鍼灸学博士」を保持。

reCare道玄坂鍼灸院の院長として臨床を行う傍ら、福岡リゾート&スポーツ専門学校で非常勤講師として教鞭を行っている。

一般社団法人日本体力医学会公益財団法人全日本鍼灸学会所属

保有資格

鍼灸学博士、はり師・きゅう師、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー、健康運動実践指導者

主な研究業績

【共同執筆者】

今西 好海

  保有資格 鍼灸学修士、はり師・きゅう師、健康運動実践指導者

奈須 守洋

  保有資格 鍼灸学修士、はり師・きゅう師