第32回はり師きゅう師国家試験
東洋医学概論 解答&解説

解説

「未病」の概念
東洋医学では「未病」とは、まだ明確な病気ではないが健康でもない状態
健康と疾病の間に存在する予防や早期介入が可能な状態を指す

1.誤り
「天人相応」の概念で自然との調和を説くが、未病の定義そのものではない。

2.誤り
「心身一如」の考え方。未病に関連するが、定義ではない。

3.誤り
組織や器官の有機的連携を示す。未病概念の核心ではない。

4.正解
未病は健康と疾病の間の連続体に位置する。予防医学・鍼灸の中心概念に相当。

解説

神の働き
広義の神とは、すべての生理活動を主宰し、それを体外に表現するもの、すなわち肉体的、精神的な生命活動の現れすべてを意味し、五感、発声、行動、精神状態、意識などを指す。
狭義の神とは、精神活動そのもの、つまり精神、意識、思惟活動などを指す。

1.誤り
意識・思考・学習・記憶などの精神活動。 狭義の神の働きに含まれる。

2.誤り
 情緒・意欲・行動の調整など。 狭義の神の働きに含まれる。

3.正解
心拍・呼吸・消化・代謝など。
 自律神経系・内分泌系の領域であり、狭義の神の働きには含まれない。

4.誤り
 快・不快などの情動、行動反応。 狭義の神の働きに含まれる。

解説

本虚標実とは？
東洋医学の病証分類の一つ
「本体（正気）が虚しているが、表面（症状）は実している」状態
典型的には虚証に伴う実証的症状が現れる

1.誤り
気の流れが滞っている状態
 多くは気滞による虚証傾向で、表面の実症状は弱い 

2.誤り
肝の陰虚（本虚）によって肝陽が亢進（標実）
 典型的な本虚標実の例
 症状：頭痛・めまい・耳鳴り・顔面紅潮など

3.誤り
肝火が肺に影響して起こる病態
 本虚標実ではなく、火邪による実証

4.誤り
心・肝に火が旺盛な状態
 実証中心の病態であり、本虚標実には含まれない

解説

水穀と直に接しない密閉した中腔器官で、精気を蔵する。骨・随・脳・脈・胆・女子胞である。形態は（腑）に似るが、精気を蔵する（臓）の特徴を持つ。
また、衝脈・任脈・督脈と密接な関係を持つものは胞（子宮）と関係性があり、月経や妊娠に関与。

1.正解
衝脈・任脈・督脈はいずれも胞（子宮）や女性生殖機能と関連 
月経の調整・生殖機能を主るのが正しい

2.誤り
骨・筋の働きは腎や骨の機能に関係 
衝・任・督との直接関係ではない

3.誤り
脳・神経系の働きに関与
 衝脈・任脈・督脈との関連としては限定的

4.誤り
心・腎・脾などの臓腑による基本的生命活動の調節
奇恒の腑の直接的機能ではない

解説

十二経別とは、経脈の流れから分かれて体内深部に走行する支脈のことである。主に肘や膝から分かれ、五臓六腑のいずれかと連絡している。正経十二経脈とは、各々が臓腑と連絡し、独立しながらも連絡しあい人体を循環する1本の環になる。陰経は臓に属して腑に絡し、陽経は腑に属して臓に絡する。

1.誤り
正経の循行は指先や足先から体幹・頭部へが一般的で、上焦起点とは限らない

2.正解
経別は正経から分かれて別行する支脈
 正経の補助・臓腑連絡・病邪の走行に関与

3.誤り
奇経は表裏関係なし、12正経の補助路として存在

4.誤り
浮絡は皮膚表面に流注する経絡の細分枝
 これは「絡脈の集合」とは異なる　

解説

1.誤り
脂肪層が厚く、皮膚が暗めで色の判断に不向き

2.正解
 皮膚が薄く毛細血管が見やすい
 顔色の代替として色調（蒼白・赤み・黄疸など）を判断しやすい

3.誤り
 皮膚が厚く、色の変化が分かりにくい

4.誤り
日焼けや衣服による圧迫で色調が変化しやすい
 望診には不向き

解説

問題のポイント
経筋（筋の走行に沿った経絡の派生）は、手足の末端から体幹・関節・重要部位に至る
陰器（生殖器）に集まる経筋は、足の三陰経筋が担当

1.誤り
手の太陰肺経・手の少陰心経・手の厥陰心包経
上肢・胸腹部に至るが、陰器には集まらない

2.誤り
 手の陽明大腸経・手の少陽三焦経・手の太陽小腸経
上肢・肩背部に至る
 陰器には集まらない

3.正解
足の太陰脾経・足の少陰腎経・足の厥陰肝経
 陰器（生殖器）に集中する経筋
 下腹部・陰部の症状に関与

4.誤り
 足の陽明胃経・足の少陽胆経・足の太陽膀胱経
下肢後面・背部に至る
 陰器には集まらない

解説
長夏（梅雨・長雨・高湿の季節）の病邪
 東洋医学では湿邪（しつじゃ）として捉える
 湿邪は水分代謝を阻害し、下肢の浮腫や重だるさを起こす

1.誤り主に肝風上擾や血虚による症状
長夏の湿邪による典型症状ではない

2.誤り
体熱や陽亢により生じる
湿邪の主症状ではない

3.誤り
乾熱邪や陰虚による症状 
湿邪単独では口渇は少ない

4.正解
湿邪が脾の運化機能を阻害
水液代謝障害により、下肢の浮腫や体の重だるさが生じやすい

解説
三毒説は①血毒②水毒③食毒の三つであり、
①血毒（瘀血）とは、月経障害・打撲・熱性病による溶血などによって生じた非生理的な血液を意味します。

②水毒とは、体内の水分の代謝障害により偏在を来した水や、病的滲出液、異常な分泌液などをいいます。

③食毒とは、飲食物や大便が消化管内に停滞し宿便となって自家中毒を起こすものです。すなわち、宿便の腐敗・発酵によって生じた有毒な物質が腸壁から吸収されてさまざまな症状を起こします。

1.誤り
外感六淫（風・寒・暑・湿・燥・火）や疫邪による伝染病 
三毒説とは直接関係ない

2.誤り
精神的ストレスや過労による内因
三毒説の対象ではない

3.正解
 外傷による血瘀・瘀毒の発生
三毒説の代表的な例

4.誤り
気血の停滞による健康問題
三毒説の直接的関与はない

解説
1.正解
「噫（げっぷ）」 → 木（肝）
「羽」 → 金（肺） 
木剋金 → 相剋関係

2.誤り
「収」 → 肺（金）
「肌肉」 → 脾（土） 
金生土 → 相生の関係

3.誤り
「麦」 → 心（火）
「羊」 → 脾（土）
 火生土 → 相生の関係

4.誤り

「石」は、五脈の「水」
「色」は、五役の「木」

解説

太陽病：外感病初期、表寒証。悪寒、発熱、頭痛、項強痛、脈浮など。
少陽病：半表半裹証。発汗、寒熱往来、胸脇苦満、口苦、眩暈、脈弦など。
陽明病：裏実熱証。発汗、壮熱、口渇、潮熱、大便秘結、譫語、洪脈など。
太陰病：裏虚寒証（初期）。食欲不振、腹部膨満感、水様便など。
少陰病：外感病の極期～後期、虚寒/虚熱証。四肢厥冷、心煩、不眠など。
厥陰病：外感病末期。寒熱錯雑。胸部不快感、口渇、四肢厥冷、嘔吐、下痢など。

上記の6経病証から、発汗があるのは少陽病と、陽明病のみ。手の少陽経は三焦経であり、流注からも耳の後ろを通る。
以上より４が正解となる。

解説

解説
【秘結（便秘）】に関する問題

①熱秘：硬い乾燥便で、顔面紅潮・口渇・口臭を伴う。実熱。
②気秘：便の形が一定せず、曖気・服満感などを伴う。気滞。
③虚秘
・なかなか排便されず、息切れや疲労感を伴う。気虚。
・兎糞状で、顔色に艶がなく、めまいを伴う。血虚、陰虚。
④冷秘：便がゆるく、腹部や四肢の冷えを伴う。陽虚。

上記から、曖気・服満感を伴う2.気秘が正解

解説

1.3.誤り
風邪の初期は、①風寒型、②風熱型の大きく2つの「証」に分けられる。①風寒型は、「青い風邪」ともいわれ、悪寒、発熱、頭痛、鼻水、関節の痛みなどの症状が見られる。その中でも、発汗の有無によって、「風寒表実証」と「風寒表虚証」に分かれる。

2.正解
裏虚証が病証である。
六経弁証では、少陰病に該当し、外感病の極期～後期、虚寒/虚熱証。四肢厥冷、心煩、不眠など。

4.誤り
六経弁証では、陽明病に該当し、裏実熱証。発汗、壮熱、口渇、潮熱、大便秘結、譫語、洪脈など。

解説

1.正解
刺入後、押手を揺るがせる。
瀉法は、比較的太めの鍼を用い、速やかに刺入、鍼を動かして邪気と生気を分け、鍼先の抵抗ゆるむをみて下圧をかけ、徐に抜鍼、鍼口は閉じない。鍼の方向は経の流れに逆らう。

2.誤り　
刺入後、細かく鍼を回転させる。

3.誤り　
呼気時に刺入し、吸気時に抜鍼する。

4.誤り　
浅く刺入し、後に深くする。
これらいずれも補法である。補法は、比較的細い鍼を用い、ゆっくり刺入、目的の深さに達したなら催気、左右圧をかけ、速やかに抜鍼、と同時に鍼口を閉じる。鍼の方向は経の流れに随う。

解説

1.誤り
汗法とは、積極的に身体の汗を出させる方法で、悪寒など風の引き始めや頭痛に用いる。発汗させることで体表面の邪気を身体に侵入させないようにする。この汗法は強すぎると正気を損なうため、極度に弱っている時は用いない。

2.誤り
清法は熱邪を「清熱」する、つまり熱を除去する方法で、化膿性の炎症や機能が過亢進して実熱、鬱熱が停滞している際に用いる。虚熱証や臓腑・気分・血分・営分に熱邪がある場合など、さまざまな局面で用いることができるが、虚寒証や虚弱な状態では用いない。

3.誤り
吐法とは、積極的に嘔吐させる方法で、食中毒を起こすようなものを食べてしまったときや、吐き気があっても吐けない時、また上焦や気道に痰濁が停滞しているときに用いる。この法も身体が虚弱している場合は正気の損傷を考慮して用いない。

4.正解
消法は、治法八法で停滞した病理産物を散らす。
消法は、炎症による腫れ、脾肥大、肝肥大、リンパ結核などの腫大を消散させる法で、血液循環や消化の促進作用がある。