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第33回はり師きゅう師国家試験
リハビリテーション医学 解答&解説

問題 71
ICFの「活動」に該当するのはどれか。
1. 呼吸機能
2. 利き手交換
3.復 職
4.家屋改修

解説

ICF(国際生活機能分類)は、以下の3つの要素から構成されます。
1.心身機能・構造 → 例:呼吸機能、筋力低下、関節の変形
2.活動 → 例:歩く、書く、着替える、利き手を使う
3.参加 → 例:復職、社会活動、スポーツ参加
さらに、環境因子(家屋改修・福祉用具など)や個人因子も加わります。

1.誤り。呼吸機能 → 「心身機能」
2.誤り。利き手交換→ 「活動」 
3.正解。復職 → 「参加」
4.誤り。家屋改修 → 「環境因子」

解答:2

問題 72
脊髄損傷患者に生じる自律神経反射について正しいのはどれか。
1. 血圧上昇にはまず降圧薬を投与する。
2. 腰髄損傷患者にみられる。
3. 脳内出血を合併することはない。
4. 難治性便秘が誘因となる。

解説
自律神経反射は、胸髄 T6以上の損傷でみられる代表的合併症。
膀胱・直腸の刺激や褥瘡などが誘因で、血圧上昇・発汗・頭痛を呈します。

1. 誤り。まずは誘因(膀胱・直腸の充満など)を除去することが第一。降圧薬は二次的対応。
2. 誤り。T6以上で多い。腰髄レベルでは起こりにくい。
3. 誤り。著明な高血圧により、脳出血のリスクがある。
4. 正解。直腸刺激は典型的誘因。

解答:4

問題 73
心臓リハビリテーションの適応となるのはどれか。
1. 不安定狭心症
2. 急性心筋炎
3. 急性大動脈解離
4. 心不全

解説

1. 誤り。 
狭心症の中でも「不安定型」は発作が頻発・増悪傾向にあり、心筋梗塞に進展するリスクが高い状態。
この時期に運動負荷をかけると発作誘発や心筋梗塞を引き起こす危険があるため 禁忌
安定狭心症になってから心リハが可能。
 

2. 誤り。 
心筋の炎症により不整脈・心不全・突然死のリスクが高い。
急性期は絶対安静が必要で、運動療法は危険。
​回復期に医師の判断でリハが検討されることもあるが、国家試験的には「急性期=禁忌」と覚える。

 

3. 誤り。
大動脈の壁が裂けているため、血圧や心拍数の上昇は破裂につながる。
運動は厳禁で、まずは降圧・外科的治療が優先。
​これも「急性期リハは絶対禁忌」の代表例。
 

4. 正しい。
急性増悪期は安静が必要だが、安定期に入ればリハビリ適応
運動耐容能を改善し、再入院率を下げ、生命予後も改善することが証明されている。
​現在では 慢性心不全に対するリハビリは標準治療

 

ポイント整理
急性期(不安定狭心症・急性心筋炎・急性大動脈解離)=禁忌
安定期心不全=適応

解答:4

問題 74
摂食嚥下機能について正しいのはどれか。
1. 先行期では食物を認識する。
2. 口腔期では食物を咀嚼し食塊を形成する。
3. 咽頭期では食塊が咽頭へ送り込まれる。
4. 食道期では食塊が食道へ送り込まれる。

解説
摂食嚥下は一般に 5期 に分類されます。
1.先行期:食物を認識(視覚・嗅覚で「食べ物だ」と判断)
2.準備期:咀嚼し、食塊を形成
3.口腔期:舌の動きで食塊を咽頭へ送り込む
4.咽頭期:嚥下反射で食塊を食道入口部へ通過させる
5.食道期:蠕動運動で食塊を胃に送る

選択肢
1. 正解。視覚・嗅覚で食べ物を認識。
2. 誤り。これは「準備期」の働き。
3. 誤り。咽頭期はすでに咽頭に達した食塊を嚥下反射で食道へ送る段階。
4. 誤り。すでに食道にある食塊を胃へ輸送する段階。

解答:1

問題 75
・大腿骨頸部骨折に対する人工骨頭置換術後のリハビリテーションで、最も 適切なのはどれか。
1. 術直後から患側下肢の抵抗運動を開始する。
2. 術後疼痛緩和のために極超短波療法を行う。
3. 患側股関節の回旋運動を行う。
4. 術後早期から荷重訓練を開始する。

解説
大腿骨頸部骨折は高齢者に多く、長期臥床すると廃用症候群や肺炎、褥瘡のリスクが高まります。
人工骨頭置換術は強固な固定が得られるため、術後早期から離床・荷重訓練が可能になります。

選択肢の解説
1. 誤り。抵抗運動は早期すぎる。まずは関節可動域訓練や等尺性運動から。
2. 誤り。深部加温で人工関節周囲に熱がこもり危険。禁忌。
3. 誤り。脱臼リスクがあり危険。特に内転・内旋は禁忌。
4. 正解。術後リハの基本。早期離床・歩行訓練で合併症を予防する。
 

解答:4

問題 76
・改訂日本版フレイル基準に含まれる項目はどれか。
1. 骨密度低下
2. 聴力低下
3. 認知機能低下
4.筋力低下


解説
1.誤り。

これは「骨粗鬆症」の評価項目であり、フレイル基準には含まれない。

2.誤り。
加齢性難聴(老年症候群の1つ)ではあるが、フレイル診断基準には入らない。

3.誤り。
認知症やMCIの評価項目。フレイルとは関連があるが、診断基準には含まれない。

4.正しい。
フレイル基準の中心項目。握力測定が用いられる。
 

フレイルとは
・高齢者において、健常と要介護の中間にあたる「虚弱」状態。
・心身の脆弱性が増し、転倒・要介護・死亡のリスクが高まる。
・早期発見・介入で改善が可能。

改訂日本版フレイル基準(J-CHS 基準)

以下の 5項目 のうち、3項目以上でフレイル1〜2項目でプレフレイルと判定する。

1.疲労感(わけもなく疲れた感じがする)
2.筋力低下(握力:男性<26kg、女性<18kg)
3.歩行速度低下(通常歩行速度<1.0 m/秒)
4.身体活動量低下

​よって選択肢の中で該当するのは 「筋力低下」

・フレイル基準は 「体重減少・疲労感・筋力低下・歩行速度低下・活動量低下」の5つ。
・「骨・聴覚・認知」は老年症候群に関係するが、診断基準には含まれない

解答:4

問題 77
・脳性麻痺の病型で最も多いのはどれか。
1. アテトーゼ型
2. 痙直型
3. 失調型
4. 混合型

解説

脳性麻痺の主な病型分類

脳性麻痺は運動障害の特徴により分類されます。

1.アテトーゼ型(Athetoid type)
約10〜20%。
不随意運動(手足がくねくね動く)が特徴。
特に新生児期の核黄疸(高ビリルビン血症)後に多い。

2.痙直型(Spastic type)
最も多い(全体の約70〜80%を占める)。
四肢や体幹の筋緊張が亢進し、動作がぎこちない。
麻痺の分布により「両麻痺・片麻痺・四肢麻痺」などに細分類される。

3.
失調型(Ataxic type)
数%と稀。
小脳障害による平衡障害・協調運動障害。

混合型(Mixed type)
複数の要素を併せ持つ。
頻度は低めだが臨床上しばしば遭遇する。

ポイント
脳性麻痺で最も多いのは「痙直型」
国家試験では「アテトーゼ型=核黄疸」との関連がよく問われる。
失調型は小脳障害と結びつけて覚えると整理しやすい。

解答:2

問題 78
・パーキンソン病におけるホーン・ヤールの重症度分類において、「姿勢反 射障害を認めるが日常生活に介助は不要な状態」はどれか。
1. ステージⅠ
2. ステージⅡ
3. ステージⅢ
4. ステージⅣ


解説

 ホーン・ヤールの重症度分類(日本語版)
ステージⅠ
 片側性の症状のみ(例:片側の手の振戦や筋固縮)。
ステージⅡ
 両側性症状が出現するが、姿勢反射障害はまだない。日常生活は自立。
ステージⅢ
 姿勢反射障害が出現。転倒しやすいが、日常生活は自立(介助不要)。
 ステージⅣ
 高度な機能障害。歩行や日常生活に介助が必要。
​ステージⅤ 
 車椅子または寝たきり状態。全面的介助が必要


ポイント
姿勢反射障害が出ているが、介助は不要 → ステージⅢ
介助が必要 → ステージⅣ
寝たきり・車椅子 → ステージⅤ

国家試験では 「ステージ分類のキーワード」 がよく問われるので、

・片側性 → Ⅰ
・両側性 → Ⅱ
・姿勢反射障害 → Ⅲ
・介助必要 → Ⅳ
・寝たきり・車椅子 → Ⅴ

と整理して暗記するのが効率的です。

解答:3

問題 79
・膝関節伸展の徒手筋力テストで、被検者を側臥位にして評価するのはどれか。
1. MMT1
2. MMT2
3. MMT3
4. MMT4

解説

 MMT(徒手筋力テスト)の基本
MMT 0:筋収縮なし
MMT 1:わずかに筋収縮を触知できる(重力なし)
MMT 2重力を除外して関節運動が可能
MMT 3:重力に抗して関節運動が可能
MMT 4:抵抗を加えても運動可能(やや劣る)
MMT 5:最大抵抗に耐えられる(正常)

膝関節伸展テストの評価肢位
MMT 3以上(3〜5):座位で膝を伸ばす(重力ありの状態)。
MMT 2:側臥位で膝伸展(重力を除外)。
MMT 1・0:仰臥位で筋収縮の有無を触知。

 したがって、「側臥位で評価する」のは MMT2

 

解答:2

問題 80
・成人の正常立位姿勢での重心は、重心線上の下から何 %の位置にあるか。
1.  約 35 %
2. 約 45 %
3. 約 55 %
4.約 65 %

解説

 成人の重心位置
成人の立位における全身重心は、身長の約55%(つまり身長のやや上半分)に位置する とされる。
具体的には、第2仙椎(S2)前方あたりが重心位置。

選択肢の解説

  1. 約35% 、誤り。
     低すぎる。これは子ども(乳幼児)に近い。頭が大きく脚が短いため重心が低い。

  2. 約45% 、誤り。
     成人よりもやや低い位置。小児~思春期前に多い数値。

  3. 約55% 、正しい。
     成人の標準的な重心位置。第2仙椎レベル。

  4. 約65% 、誤り。
     高すぎる。これは「体幹上部に重心がある」と仮定した場合で、成人の実際の値ではない。

    国家試験では「成人の重心=55%、第2仙椎前方」が頻出なので、そのまま暗記で大丈夫です。

解答:3

問題 81
・関節リウマチによる関節変形で最も適切なのはどれか。
1. MP 関節の尺側偏位
2.O 脚
3. 凹 足
4. 翼状肩甲

解説
1.
MP関節の尺側偏位 :正しい。

 関節リウマチ(RA)の代表的変形

RAは滑膜炎により関節破壊が進行し、特に手指関節に特徴的な変形を生じます。
MP関節の尺側偏位 
 もっとも典型的な変形。手指が小指側(尺側)に流れる。
スワンネック変形(PIP伸展・DIP屈曲)
ボタンホール変形(PIP屈曲・DIP伸展)

国家試験では「尺側偏位・スワンネック・ボタンホール」が定番キーワード。

2.O脚:誤り。 
 変形性膝関節症(OA)で典型的。RAではX脚(外反膝)の方が起こりやすい。
3.凹足 :誤り。
 足部の縦アーチが過度に高い状態。神経疾患(脊髄性小児麻痺など)で多い。
4.翼状肩甲:誤り。
  前鋸筋麻痺(長胸神経麻痺)によって起こる。RAとは関係なし。

ポイント
RAの代表的変形: MP関節尺側偏位・スワンネック変形・ボタンホール変形
変形性膝関節症(OA):O脚
長胸神経麻痺:翼状肩甲
神経疾患:凹足

解答:1

問題 82
・社会的リハビリテーションに含まれる内容はどれか。
1. 家族への介護指導
2. 職場環境の整備
3. 個別の理学療法
4. 管理栄養士による栄養管理

解説
1.誤り。医学的リハビリに含まれる。

2.正しい。社会的リハビリの一部。
バリアフリー化や福祉サービス導入もここに含まれる。
3.誤り。 医学的リハビリ。
4.誤り。 医学的リハビリ。

 

リハビリテーションの4分類
医学的リハビリテーション
 → 医師・PT・OT・ST・看護師などが行う治療・訓練。
 例:理学療法、作業療法、栄養管理、介護指導など。
教育的リハビリテーション
 → 特別支援教育、学習支援。 例:障害児に対する就学支援。
職業的リハビリテーション

 → 就労に関する訓練や支援。 例:職業訓練、就労移行支援。
社会的リハビリテーション

 → 社会に適応し、生活できるように支援すること。​ 例:住環境の整備、職場環境の整備、バリアフリー化、地域活動参加。

ポイント

社会的リハ=社会生活に適応できるように環境を整える支援
医学的リハ=治療や訓練
職業的リハ=働くための支援
​教育的リハ=学習・教育支援

解答:2

【監修者】 鍼灸学博士 納部瑠夏

鍼灸系の大学院を修了し、鍼灸治療の専門家の証である「鍼灸学博士」を保持。

reCare道玄坂鍼灸院の院長として臨床を行う傍ら、福岡リゾート&スポーツ専門学校で非常勤講師として教鞭を行っている。

一般社団法人日本体力医学会公益財団法人全日本鍼灸学会所属

保有資格

鍼灸学博士、はり師・きゅう師、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー、健康運動実践指導者

主な研究業績

【共同執筆者】

今西 好海

  保有資格 鍼灸学修士、はり師・きゅう師、健康運動実践指導者

奈須 守洋

  保有資格 鍼灸学修士、はり師・きゅう師