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第33回はり師きゅう師国家試験
総合問題 解答&解説

問題 151

「46 歳の女性。夫の死をきっかけにうつ病を発症。悲観的思考となり、気力が極度 に減退。食欲もなく、動悸・不眠・健忘を伴う。舌質は淡、脈は細弱を認める。」

・ 病証として最も適切なのはどれか。
1. 肝腎陰虚
2. 肝気鬱結
3. 心脾両虚
4. 脾気下陥

解説

 

1.誤り
肝腎陰虚とは、肝・腎が陰虚状態であることをさす。陰虚(陰熱)は、ほてり、のぼせ、五心煩熱、手足身熱、盗汗、頬部紅潮、消痩、潮熱、舌質(紅)、舌苔(少)、脈(細脈)などである。

2.誤り
肝気鬱結とは、精神的ストレスによる症状をさす。気の巡りが悪く、イライラ、憂うつ、胸脇部の張り、ため息などの症状を呈する。女性では、生理時に乳房が張って痛む、生理痛、生理不順などの症状もみられる。

3.正解
心脾両虚
が疑われる。心脾両虚とは、心臓と脾臓の両方が虚弱になった状態である。症状として、不眠、貧血、物忘れ(健忘症)などがみられる。

4.誤り
脾気下陥とは、脾気の昇提作用の低下により脾虚全般の症状に加え、胃下垂、胃のもたれ、脱肛、子宮脱などの症候を呈す。

解答:3

問題 152

「46 歳の女性。夫の死をきっかけにうつ病を発症。悲観的思考となり、気力が極度 に減退。食欲もなく、動悸・不眠・健忘を伴う。舌質は淡、脈は細弱を認める。」

・治療の結果、食欲が出てきて、気力の減退も改善してきた。この時期に最 も注意すべき症状はどれか。
1. 幻 聴
2. 観念奔逸
3. 強迫行為
4. 自殺念慮

解説

 

1.× 幻聴は、主に統合失調症にみられる。
・統合失調症とは、幻覚・妄想・まとまりのない発語および行動・感情の平板化・認知障害ならびに職業的および社会的機能障害を特徴とする。原因は不明であるが、遺伝的および環境的要因を示唆する強固なエビデンスがある。好発年齢は、青年期に始まる。治療は薬物療法・認知療法・心理社会的リハビリテーションを行う。早期発見および早期治療が長期的機能の改善につながる。統合失調症患者の約80%は、生涯のある時点で、1回以上うつ病のエピソードを経験する。統合失調症患者の約5~6%が自殺し,約20%で自殺企図がみられる。したがって、うつ症状にも配慮して、工程がはっきりしたものや安全で受け身的で非競争的なものであるリハビリを提供する必要がある。(※参考:「統合失調症」MSDマニュアル様HPより)

2.× 観念奔逸とは、考えが次々と方向も決まらずにほとばしり出る状態である。躁病でみられる。

3.× 強迫行為は、強迫神経症にみられる。強迫神経症とは、自分の意志に反する不合理な観念(強迫観念)にとらわれ、それを打ち消すために不合理な行動(強迫行為)を繰り返す状態をいう。

4.〇 正しい。自殺念慮が、本設問の最も注意すべき症状である。なぜなら、自殺念慮は、うつ病の再燃が疑われる症状の一つであるため。
・自殺念慮とは、死にたいと思い、自殺することについて思い巡らす事のことをいう。自殺念慮の切迫度は、計画の具体性が高い場合、また実際に準備をしている場合に高いと判断する。うつ病患者への対応として、他にも、①調子が悪いのは病気のせいであり、治療を行えば必ず改善すること、②重要事項の判断・決定は先延ばしにすることなどがあげられる。

解答:4

問題 153

「65 歳の女性。右手関節部の骨折による変形が原因で、示指と中指の指先がしびれ て、母指の動きが障害されるようになった。」

・最も認められる徴候はどれか。
1.  祈祷師の手
2. ティアドロップサイン
3. パーフェクト O の不整
4. フロマン徴候

解答

右手関節の骨折後、示指・中指のしびれ(=正中神経支配領域)
母指の動き障害(母指対立筋など正中神経支配)→ 正中神経麻痺 を示唆。

1と2.誤り
祈祷師の手/ティアドロップサインは、正中神経麻痺(
高位)で起こる。正中神経麻痺によって生じる祈祷手とは、正中神経の運動枝である前骨間神経の障害によって発生する。拳を握ろうとした時に環指と小指しか屈曲しない肢位のことをさす。

3.正解
 正中神経麻痺でみられる。
母指と示指で「OKサイン」を作ろうとすると、指が丸くならず平行になる。
本症例は、右手関節部での正中神経の圧迫(手根管症候群)による低位の正中神経障害が疑われるため。

4.誤り
尺骨神経麻痺
で陽性。
紙を母指と示指で挟むと、母指IP関節を屈曲して代償する。

解答:3

問題 154

「65 歳の女性。右手関節部の骨折による変形が原因で、示指と中指の指先がしびれ て、母指の動きが障害されるようになった。」

・骨折した骨として最も適切なのはどれか。
1. 舟状骨
2. 橈 骨
3. 尺 骨
4. 有鉤骨

解答
ポイント
手関節部の骨折後に「正中神経麻痺(示指・中指のしびれ、母指対立障害)」が出ている。→ 手関節の変形を伴う橈骨遠位端骨折(コレス骨折など) が典型。

1.誤り
手根骨の一つ。手関節の橈側にあり、骨折は多いが主に手関節の疼痛や可動域制限が主症状。正中神経麻痺は起こりにくい。

2.正解
遠位端骨折(コレス骨折など)では、変形により正中神経が圧迫されることがある。
 示指・中指のしびれ、母指の運動障害が出現。

3.誤り
小指側の骨。骨折しても通常は尺骨神経麻痺(小指・環指の障害)が出る。

4.誤り
手根骨の一つで、骨折すると尺骨神経麻痺が起こることが多い。
示指・中指ではなく、小指・環指の障害が中心。

解答:2

問題 155

「35 歳の男性。インスタント麺ばかり食べている。全身がだるく、最近は下肢にし びれがみられる。膝蓋伳反射は減弱し、近医でビタミン不足と言われた。」

不足しているビタミンはどれか。
1. ビタミン A
2. ビタミン B1
3. ビタミン B12
4. ビタミン D

解答

主食がインスタント麺(炭水化物中心で栄養偏り)
全身倦怠感・下肢のしびれ
膝蓋腱反射の減弱 末梢神経障害を起こす 。ビタミンB1欠乏(脚気) が典型。

1.誤り
主に視覚に関与。欠乏すると夜盲症角膜乾燥症を起こす。 → 神経症状はみられない。

2.正解
ビタミンB1(チアミン)
 欠乏で脚気(末梢神経炎)を起こす。
症状:全身倦怠、下肢のしびれ、腱反射減弱、浮腫など。重症例ではウェルニッケ脳症も。

3.誤り
欠乏で悪性貧血脊髄後索障害
(深部感覚障害・位置覚低下)を起こす。膝蓋腱反射は亢進することもある。

4.誤り
骨代謝に関与。欠乏するとくる病・骨軟化症。 
しびれや腱反射減弱は起こらない。

解答:2

問題 156

「35 歳の男性。インスタント麺ばかり食べている。全身がだるく、最近は下肢にし びれがみられる。膝蓋伳反射は減弱し、近医でビタミン不足と言われた。」

症状改善に効果があるとされる、 8 つの䊞穴の組合せに含まれるのはどれか。
1. 膝陽関
2. 内膝眼
3. 陽陵泉
4. 上巨虚

解答
ポイント

ビタミンB₁欠乏(脚気)による下肢のしびれ・倦怠感
東洋医学的には、これは脚気八処(かっけはっしょ)と呼ばれる治療穴の組合せで改善を図る。
 

脚気八処のツボ

脚気の治療に用いる8つの経穴
風市【胆】、伏兎【胃】、外膝眼【奇】、犢鼻【胃】
足三里【胃】、
上巨虚【胃】、下巨虚【胃】、懸鍾【胆】
これらは主に下肢の経脈を通して気血の運行を促進し、神経・筋の機能回復を助ける。
 

1.誤り
膝陽関は、膝外側、大腿二頭筋腱と腸脛靭帯の間の陥凹部、大腿骨外側上顆の後上縁に位置する。

2.誤り
内膝眼は、膝前面、膝蓋靱帯内方の陥凹部に取る。【主治】膝関節疾患、脚気、中風、下肢痛、下肢倦怠感である。

3.誤り
陽陵泉は、下腿外側、腓骨頭前下方の陥凹部に位置する。

4.正解
上巨虚が、症状改善に効果がある。なぜなら、脚気八処の穴該当するため。
上巨虚は、下腿前面、犢鼻と解渓を結ぶ線上、犢鼻の下方6寸に位置する。

解答:4

問題 157

「28 歳の男性。職場でハラスメントを受けている。腹痛と下痢がひどく、出勤途中 に数回トイレに行く。血便はなく、休日は症状が出ない。舌質は淡紅、舌苔は少、脈 は弦を認める。」

疾患として最も適切なのはどれか。
1. 胃食道逆流症
2. 潰瘍性大腸炎
3. 過敏性腸症候群
4. 機能性ディスペプシア

解答

1.誤り
胸やけ、呑酸、咳などが主症状。
→ 下痢や腹痛は主症状ではない。

2.誤り
自己免疫性の炎症性腸疾患。 血便・粘血便・発熱・体重減少を伴う。
器質的変化(粘膜潰瘍)を認める。


3.正解
器質的異常なし。ストレス・緊張で腹痛・下痢・便秘などの症状が出る。
休日やリラックス時には症状が軽減。
→ 「脈弦」「舌苔少」は、東洋医学的に肝気鬱結・脾虚を反映。

4.誤り
上腹部の膨満感・不快感・食後のもたれ感などが主。 下痢は伴わない。

解答:3

問題 158

「28 歳の男性。職場でハラスメントを受けている。腹痛と下痢がひどく、出勤途中 に数回トイレに行く。血便はなく、休日は症状が出ない。舌質は淡紅、舌苔は少、脈 は弦を認める。」

治療方針として最も適切なのはどれか。
1. 肝と心の火を降ろす。
2. 肝と脾の調和を図る。
3. 肺と腎の陰液を補う。
4. 心と腎の交わりを図る。

解答

1.誤り
肝と心の火を降ろす。
これは、肝火上炎や心火亢盛に対して実施する。肝火上炎は、頭痛、眩暈、耳鳴、目赤、急躁、易怒、舌辺紅、脈弦数などがみられる。

2.正解
肝と脾の調和を図る。なぜなら、本症例は精神的なストレスによる肝気鬱結が、脾胃の運化機能に影響を及ぼし、腹痛や下痢といった消化器症状を引き起こしている「肝脾不和」の病態であるため。

3.誤り
肺と腎の陰液を補う。
これは、肺陰虚や腎陰虚に対して実施する。肺陰虚は、乾いた咳嗽、痰(粘稠で少量黄色)、盗汗、のぼせ、口乾、舌質紅などである。

4.誤り
心と腎の交わりを図る。
これは、心腎不交に対して実施する。心腎不交とは、腎陰が損耗し、心陰を補えず、心火が亢進しすぎて不眠を生じる状態のことである。

解答:2

問題 159

「52 歳の女性。右側の表情筋麻痺で来院。同側の額のしわ寄せは不能で、涙液減少、 聴覚過敏、味覚障害、唾液分泌障害を伴う。」

四総穴の主治を踏まえて治療する場合、最も適切な経穴はどれか。
1. 合 谷
2. 列 欠
3. 委 中
4. 足三里

解答

同側の額のしわ寄せは不能で、涙液減少、聴覚過敏、味覚障害、唾液分泌障害を伴う。
本症例は、
顔面神経の障害が疑われる
今回の選択肢から四総穴の問題と推定。

四総穴とは
足三里【胃】:腹部一切
委中【膀】:腰背部
列欠【肺】:頭項部疼痛

合谷【大】:顔面・目

以上から、
1.正解
合谷が四総穴の主治を踏まえて治療する。合谷は、顔面・目に該当する。

合谷は、手背、第2中手骨中点の橈側に位置する。

2.誤り
列欠は、頭項部疼痛に該当する。
列欠は、前腕橈側、長母指外転筋腱と短母指伸筋腱の間、手関節掌側横紋の上方1寸5分に位置する。

3.誤り
委中は、腰背部に該当する。
委中は、膝後面、膝窩横紋の中点に位置する。深部に脛骨神経が通る。

4.誤り
足三里は、腹部一切に該当する。
足三里は、下腿前面、犢鼻と解渓を結ぶ線上、犢鼻の下方3寸に位置する。

解答:1

問題 160

「52 歳の女性。右側の表情筋麻痺で来院。同側の額のしわ寄せは不能で、涙液減少、 聴覚過敏、味覚障害、唾液分泌障害を伴う。」

後遺障害として出現の可能性が最も高いのはどれか。
1. ワニの涙
2. 慢性中耳炎
3. 眼瞼下垂
4. 共同偏視

解答

涙液減少・味覚障害・唾液分泌障害・聴覚過敏 → 顔面神経(第Ⅶ脳神経)の全域障害
→ 回復過程で異常再生(誤支配)が起こると、後遺症として「ワニの涙」が出現する。

1.正解
ワニの涙は、後遺障害として出現の可能性が最も高い。

「ワニの涙症候群」:顔面神経麻痺の後遺症で、唾液の分泌を支配する神経と涙の分泌を支配する神経が混同してしまうと、食事の時に涙が勝手に出てしまうこと。他にも、眼輪筋と口輪筋が正しく繋がらず、開眼すると口角が動くなどの病的共同運動を生じることがある。

2.誤り
眼球陥凹は、主にホルネル症候群などにみられる。
Horner 徴候(ホルネル徴候)とは、ホルネル症候群の交感神経遠心路の障害によって生じる。中等度縮瞳、眼瞼下垂(眼裂狭小)、眼球陥凹(眼球後退)を三大徴候とする

3.誤り
眼瞼下垂は、主に神経筋接合部の障害(例:重症筋無力症)にみられる。

4.誤り
共同偏視とは、両目が同じ方向または対称性を持ち、偏って位置する状態のことである。主に、脳梗塞や脳出血(被殻出血、視床出血、小脳出血など)に伴って生じる。共同偏視は、被殻出血(病側への共同偏視)や小脳出血(健側への共同偏視)で生じる。共同偏視は、PPRF(水平方向の眼球運動の中枢)の機能障害で起こる。

解答:1

【監修者】 鍼灸学博士 納部瑠夏

鍼灸系の大学院を修了し、鍼灸治療の専門家の証である「鍼灸学博士」を保持。

reCare道玄坂鍼灸院の院長として臨床を行う傍ら、福岡リゾート&スポーツ専門学校で非常勤講師として教鞭を行っている。

一般社団法人日本体力医学会公益財団法人全日本鍼灸学会所属

保有資格

鍼灸学博士、はり師・きゅう師、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー、健康運動実践指導者

主な研究業績

【共同執筆者】

今西 好海

  保有資格 鍼灸学修士、はり師・きゅう師、健康運動実践指導者

奈須 守洋

  保有資格 鍼灸学修士、はり師・きゅう師