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顔面神経麻痺(ベル麻痺)に対する鍼治療の効果 -医学論文の紹介-

ベル麻痺に鍼治療は効くのか?

末梢性顔面神経麻痺であるベル麻痺は、表情筋という顔の筋肉が麻痺してしまい、様々な後遺症を残します。発症から初期にはステロイド剤の有効といわれていますが、3か月から6か月が経過した後には特異的な治療法が確立されていないのが現状です。そうした状況下で鍼灸治療は副作用などの心配性も少なく、安全性の高い治療方法として期待が寄せられています。そこで今回は、ベル麻痺に対しての鍼灸治療の有効性を検討した論文を紹介いたします。

今回紹介する論文

Öksüz CE et al. 

The Efficacy of Acupuncture in the Treatment of Bell's Palsy Sequelae.

Acupunct Meridian Stud ;12(4):122-130 doi: 10.1016/j.jams.2019.03.001. Epub 2019 Apr 1.

この論文の目的

ベル麻痺に対しての鍼治療が有効でかつ、安全かどうかを検討すること。

この論文の方法

被験者

3か月以上前にベル麻痺と診断されており、後遺症が持続している15歳以上の者 各群20名ずつの合計40名

ランダム化

被験者は、鍼治療を受ける群(鍼治療群)と鍼治療を受けない群(対照群)の2群に振り分けられた。

介入

電気鍼治療および耳鍼治療を週に3回の頻度で、4週間、合計12回の治療を行った。

電気鍼を行った経穴(ツボ)を示している図。赤い点の経穴は左右どちらかの片側に鍼を刺し、青い点の経穴は左右両側に鍼を刺して電気治療を実施した。
本論文のFig1より転用

治療効果の評価

鍼治療介入前と12回の治療終了後のそれぞれに評価を行った。

治療効果を評価するためには、

顔面神経複合運動電位(cMAP)

House-Brackman(HB)評価スケール

Sunnybrook(SB)評価スケール

をそれぞれ測定した。

この論文の結果

顔面神経複合運動電位(cMAP)の結果

鍼治療群では、治療前と比べて治療後で有意差が認められた

各治療群の治療前と治療後のcMAPの数値の変化を示している表
本論文のTable3より転用

House-Brackman(HB)評価スケールの結果

鍼治療群と対照群の両方で、治療前と比べて治療後で有意差が認められた。

Sunnybrook(SB)評価スケールの結果

鍼治療群と対照群の両方で、治療前と比べて治療後で有意差が認められた。

各治療群の治療前と治療後のHouse-Brackman(HB)とSunnybrook(SB)評価スケールの変化を示している表
本論文のTable4より転用

また、HBのスコアは治療前の値から治療後の値を差し引いた変数を求めて両群を比較してみると、鍼治療群では全20名の患者のうち15名が改善、対象群では全20名の患者のうち7名が改善しており、鍼治療群の方が統計学的に有意に改善している患者の数が多かった

鍼治療群と対照群の治療前後で「改善」した患者の人数を比較した結果を表している表
本論文のTable6より転用

有害事象の結果

鍼治療群において痛みや出血、青あざ、吐き気、などの鍼治療に関連する有害事象は観察されなかった

この論文の考察

cMAPの値は鍼治療群でのみ治療前後で有意な変化が認められ、このことはベル麻痺の後遺症に対して鍼治療が治癒的効果をもたらすと結論づけることができる。

結果から、ベル麻痺の後遺症が継続している患者に対して、鍼灸治療を行うことは効果的かつ安全な治療法である可能性が見いだされた。

今回紹介した論文のまとめと解説

今回紹介した論文では、ベル麻痺の後遺症がある患者に対して、鍼治療と行う群と何も行わない群で比較して、その効果と安全性を検討していました。その結果、鍼治療を行った群のほうが、治療効果がありました。また、鍼治療に関係する有害事象も発生しておらず、安全な治療法であることが示されました。ベル麻痺は発症初期にはステロイドを使用することが推奨されていますが、急性期が過ぎてしますと、有効な治療法が未だ確立されていません。急性期を過ぎてしまった慢性期のベル麻痺の患者さんは、なかなか積極的な治療を受けることができていないのが現状です。こうした現状で、何もしないでいるよりも、安全である治療である鍼灸治療を受けてみることは、今の後遺症の症状が少しでも良くなる可能性があります。慢性期のベル麻痺の後遺症に対して、一度鍼治療を受けてみるのはいかかでしょうか。

当院での顔面神経麻痺に対しての鍼灸治療

今回の論文で紹介したような「ベル麻痺」に対しての鍼治療は、当院の「伝統鍼灸治療」という治療コースがおすすめです。麻痺で固くなった表情筋を柔らかくしたり、リハビリを実施します。

【監修者】 鍼灸学博士 納部瑠夏

鍼灸系の大学院を修了し、鍼灸治療の専門家の証である「鍼灸学博士」を保持。

reCare道玄坂鍼灸院の院長として臨床を行う傍ら、福岡リゾート&スポーツ専門学校で非常勤講師として教鞭を行っている。

一般社団法人日本体力医学会公益財団法人全日本鍼灸学会所属

保有資格

鍼灸学博士、はり師・きゅう師、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー、健康運動実践指導者

主な研究業績

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